無意識のうちに「下くちびるを噛んでしまう」「口を閉じると下唇が歯の裏に巻き込まれる」「写真を撮ると唇が内側に入り込んで見える」──お子様のそんなお悩みを抱えていませんか。実は口元の筋肉バランスや舌の位置、呼吸の仕方といった“口腔習慣の乱れ”が背景に潜んでいることがあります。そのまま放置すると、歯並び・噛み合わせ・口元の印象に影響する可能性もあるため、早めに気づくことが大切です。

今回は、「なぜ下唇巻き込みが起きるのか」「どのようなリスクがあるのか」「改善・予防のために今日からできること」を歯並びの視点でわかりやすく解説します。ご自身やお子さまのセルフチェックにも役立つ内容ですので、ぜひ最後まで参考になさってください。
目次
なぜ「下唇巻き込み」が起きるのか ─ 原因を知る
下唇が内側に巻き込まれたり、無意識に噛んでしまったりする背景には、単一の原因ではなく複数の要素が絡み合っています。とくに「唇・舌・頬の筋肉バランス」と「呼吸の習慣」「歯並びの特徴」は密接に関係しており、どれか一つでも乱れると口元の姿勢が不安定になりやすくなります。
たとえば、唇を閉じる筋肉である口輪筋が弱いと、自然に口を閉じているだけで疲れやすく、下唇が内側に入り込みやすくなります。また、舌が本来あるべき「上あご」ではなく下方に位置していると、歯列や口元を支える力が不足し、巻き込みを助長します。さらに、口呼吸の習慣があると口唇閉鎖の時間が短くなり、唇と舌の使い方がアンバランスになります。加えて、上の前歯が前に出ているなど歯並びに特徴がある場合、下唇が入り込みやすい“スペース”が生まれ、巻き込みが起こりやすくなります。
下唇巻き込みがもたらすリスク・影響
下唇を内側に巻き込むクセは、見た目だけの問題にとどまらず、歯並び・噛み合わせ・口腔機能・衛生状態など、将来の健康にまで影響が及ぶことがあります。とくに「筋肉バランスの乱れ」「口呼吸による乾燥」「舌の位置不良」は悪循環を生み、放置すると改善に時間がかかるケースもあります。
まず、歯並びや咬合への影響です。唇や舌、頬の筋肉が不自然な方向に力を加えると、歯列が狭くなったり前歯が押され続けたりして、出っ歯や叢生などの不正咬合につながる可能性があります。また、長期的に口元の筋肉バランスが崩れると、顔が縦に伸びやすい、横顔のバランスが変わるといった見た目の変化が生じることもあります。

さらに、口呼吸による口腔内の乾燥はむし歯・歯肉炎・口臭などのリスクを高め、健康面でのデメリットも増大します。舌や唇の位置が不自然なまま習慣化してしまうと、発音や飲み込みの動作にクセが出ることもあり、機能面で違和感が出る場合もあります。

改善・予防のためにできること(セルフケアと習慣づくり)
下唇の巻き込みは、日々の口の使い方や筋肉バランスと密接に関係しています。そのため、少しの意識づけやセルフケアを取り入れることで、改善や予防が十分に期待できます。とくに「口輪筋の強化」「舌の正しいポジション」「鼻呼吸の習慣化」「姿勢の見直し」は、どれも取り組みやすい内容となっています。
たとえば、口笛や吹き戻しなどのエクササイズは唇の筋力を強化し、自然な口唇閉鎖をサポートしてくれます。また、舌を常に上あご(口の天井)につける意識づけは、歯列の安定や口元の姿勢改善に役立ちます。さらに、鼻呼吸を習慣づけるための取り組みとしては、「お口テープ」を普段使用することで習慣化させることで、口腔内の乾燥予防や筋肉バランス改善につながり、夜間の口の開き癖にも良い影響があります。姿勢の改善も重要で、リラックスした状態でも唇が自然に閉じる環境づくりが大切です。
場合によっては専門的ケアや矯正も検討を
セルフケアで改善が期待できるケースはありますが、歯並びや噛み合わせ、舌の癖が強い場合には、専門的なサポートを受けることで確実な改善につながります。
舌の位置や呼吸、嚥下の習慣を整える「筋機能療法(MFT)」は、正しい口の使い方を身につけるうえで効果的です。呼吸や舌の癖が根本原因になっている場合、MFTとセルフケアを並行することで改善のスピードが高まります。また、前歯の傾斜や歯列の乱れが原因となっている場合は、矯正治療で歯列と噛み合わせのバランスを整えることが選択肢に入ります。
見た目・機能・将来の健康を総合的に考慮した治療計画を立てることで、再発予防や長期的な安定にもつながります。
子ども vs 大人 ― アプローチの違いと注意点
下唇の巻き込みや口元のクセは、年齢によって改善のしやすさが異なります。骨格が成長途上にある子どもと、成長がほぼ完了した大人では、アプローチ方法や期待できる変化も大きくことなります。
子どもの場合、舌の位置や呼吸、口周りの筋肉バランスを整えることで、比較的変化が現れやすいというメリットがあります。あごや歯列が成長途中のため、改善がスムーズです。一方、大人は習慣が固定化していることが多く、取り組みには根気が必要で、筋肉の使い方や呼吸の改善が子どもと比較して、難しいです。
年齢を問わず大切なのは、「今の口の姿勢」を見直すこと。舌はどこにあるか、口は開いていないか、唇は自然に閉じているか──こうした日常の積み重ねが、将来の健康を左右します。
まとめ:下唇巻き込みは“口の使い方”のサイン。早めの見直しが未来の口元を守る
下唇が内側に巻き込まれる、唇を無意識に噛んでしまう──こうした症状は単なるクセではなく、口輪筋の弱さ、舌の位置、呼吸習慣、歯並びなど複数の要素が重なって生じる「口腔機能のサイン」です。放置すると、歯並び・噛み合わせ・口元の印象・口腔の乾燥など、見た目にも健康面にも影響が及ぶ可能性があります。
一方で、日常のセルフケア(口輪筋のトレーニング、舌の正しい位置の意識、鼻呼吸の習慣化、姿勢の見直し)によって、多くの場合で改善や予防が期待できます。さらに、必要に応じて筋機能療法(MFT)や矯正治療を組み合わせることで、根本的な原因へのアプローチも可能です。
子どもは成長を味方にでき、大人も習慣と筋肉の使い方を変えることで十分な改善が見込めます。「今の口の姿勢」を整えることは、将来の歯並びや口元のバランス、口腔の健康を守る大きな第一歩です
気になる癖がある、歯並びが心配、という場合は、まずはこども歯並び専門の滋賀県高島市のたむら歯科・こども矯正歯科の田村 光正にお気軽にご相談ください。
【執筆・監修者】
たむら歯科・こども矯正歯科 院長
田村 光正 (歯科医師)
- 滋賀医科大学精神科 客員
- 睡眠歯科学会会員
- 顎咬合学会会員
- 即時荷重研究会会員
- 口育士





