「うちの子、いつも口が開いている気がする…」
「口呼吸って本当に歯並びに影響するの?」

このような疑問や不安を感じたことはありませんか?
呼吸の仕方――つまり「口呼吸」か「鼻呼吸」かは、単なるクセの問題ではありません。実は、顔つき・顎の成長・歯並び・さらには睡眠の質や免疫機能にまで影響を及ぼす重要な要素です。
特に成長期のお子さまにおいては、呼吸の仕方が顎顔面の発育を左右し、将来の噛み合わせや横顔の印象にも関わってきます。
本記事では、
- 鼻呼吸と口呼吸の違い
- 口呼吸が続くことで起きる顔つきや歯列の変化
- 低位舌との関係
- 日常でできる改善方法
- プレオルソを活用した機能矯正
まで、わかりやすく丁寧に解説します。
「今からでも改善できるの?」「矯正が必要なの?」と悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
呼吸の基本 — 鼻呼吸と口呼吸の違い
人間の呼吸には「鼻呼吸」と「口呼吸」があります。どちらも空気を取り込む方法ですが、体や顔の発育に与える影響は大きく異なります。
本来、人は鼻で呼吸するように身体が設計されています。鼻には空気を浄化・加湿・温度調整する機能があり、体を守るフィルターの役割を果たしています。一方で、口呼吸が習慣化すると、口腔内環境の悪化や顎の発育バランスの乱れにつながることがあります。
「少し口が開いているだけ」と軽く考えられがちですが、成長期では顔貌形成や歯列に影響することも少なくありません。
ここからは、
- 鼻呼吸の具体的なメリット
- 口呼吸がもたらすデメリット
- 自分でできる呼吸タイプのチェック方法
を順番に解説していきます。
鼻呼吸のメリットとは
鼻呼吸は、健康を守るための“天然の空気清浄機”のような働きをしています。
具体的には、
- 鼻毛や粘膜による異物・ウイルスの除去
- 空気の加湿・加温
- 副鼻腔で産生される一酸化窒素による血流改善サポート
- 深い呼吸による酸素効率の向上
といった役割があります。
たとえば、鼻呼吸ができているお子さまは、睡眠中も口が閉じているため、喉が乾燥しにくく、いびきや睡眠の質の低下が起こりにくい傾向があります。
また、舌が自然と上あごに位置するため、上顎の横方向の発育を助け、歯が並ぶスペースを確保しやすくなります。
つまり鼻呼吸は、呼吸機能だけでなく「顔の成長を支える土台」でもあるのです。
口呼吸のデメリット
口呼吸が続くと、さまざまな問題が生じます。
まず起こりやすいのが口腔内の乾燥です。唾液には抗菌作用がありますが、口が開いて乾燥すると虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
さらに重要なのが、顎顔面の成長への影響です。
口が開いている状態では舌が下がりやすくなります(低位舌)。すると上顎の発育が不足し、歯列が横に広がらず、結果として
- 出っ歯(上顎前突)
- 開咬(前歯が噛み合わない)
- 歯列狭窄(歯並びが窮屈)
といった不正咬合につながることがあります。
また、慢性的な口呼吸は「アデノイド顔貌」と呼ばれる縦長で口元が突出した顔貌傾向を引き起こすこともあります。
見た目の問題だけでなく、噛み合わせや将来的な矯正治療の難易度にも関わるため、早期の気づきが大切です。
どっちが正しい?呼吸の判断ポイント
「自分は鼻呼吸だと思っているけれど、本当に大丈夫?」
実は、無意識のうちに口呼吸になっているケースも少なくありません。そ
次の項目に当てはまる場合は注意が必要です。
- 気づくと口がポカンと開いている
- 朝起きたときに喉が乾いている
- いびきをかく
- 食事中によくクチャクチャ音がする
- 唇が常に乾燥している
また、横顔を見たときに口元が前に出ている印象がある場合も、口呼吸習慣が関係していることがあります。
簡単なセルフチェックとしては、「何もしていないときに自然に唇が閉じているか」を確認してみてください。力を入れないと閉じられない場合は、口周りの筋機能低下が疑われます。
口呼吸が続くと起きる顔つきと歯列の変化
「ただのクセだから、そのうち治るだろう」
そう思われがちな口呼吸ですが、慢性化すると顔貌や歯並びに明確な変化が現れることがあります。
特に成長期では、呼吸様式が顎の発育方向を左右します。鼻呼吸ができている場合、舌は自然と上あごに触れ、上顎は横方向にしっかり成長します。しかし口呼吸が続くと舌が下がり、上顎が十分に広がらず、顔が縦方向に伸びやすくなります。
その結果、
- 顔が縦長になる
- 口元が前に出る
- 歯列が狭くなる
- 噛み合わせが不安定になる
といった変化が起こる可能性があります。
ここからは、具体的にどのような顔貌変化や歯列不正が起こるのかを解説していきます。
アデノイド顔貌とは
アデノイド顔貌とは、慢性的な口呼吸に関連して見られる特徴的な顔つきのことを指します。
具体的には、
- 顔が縦に長い
- 下あごが後退気味
- 口元が突出している
- 常に口が開いている
- 鼻の下が長く見える
といった特徴が挙げられます。

これは、鼻づまりやアレルギーなどにより鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸が習慣化することで起こります。舌が下がり、上顎が横に広がらず、下顎が後方回転しやすくなるため、縦方向への成長が強調されるのです。
見た目の印象だけでなく、噛み合わせや発音、咀嚼効率にも影響を及ぼすことがあるため、単なる審美的問題として軽視できません。
歯並びへの影響
口呼吸と低位舌が続くと、歯列にもさまざまな影響が現れます。
たとえば、
■ 出っ歯(上顎前突)
上の前歯が前方に傾きやすくなります。口が常に開いていることで唇の抑える力が弱くなり、前歯が前方へ突出しやすくなります。
■ 開咬(前歯が噛み合わない)
舌が前方に押し出す癖(舌突出癖)があると、前歯部が噛み合わなくなることがあります。
■ 歯列狭窄
上顎が横に広がらないため、歯が並ぶスペースが不足し、ガタガタ(叢生)になりやすくなります。
このような歯列不正は、見た目だけでなく清掃性の低下や虫歯・歯周病リスクの増加にもつながります。
「歯並びが悪いから矯正する」という考え方だけでなく、「なぜその歯並びになったのか」という原因に目を向けることが重要です。
健康への総合的影響
口呼吸の影響は、顔や歯並びだけにとどまりません。
まず大きな問題は、口腔内の乾燥です。唾液が減少すると、虫歯菌や歯周病菌が増殖しやすくなります。また、口臭の原因にもなります。
さらに、睡眠の質にも影響します。口呼吸は気道が不安定になりやすく、いびきや浅い睡眠を引き起こすことがあります。成長期のお子さまでは、集中力低下や日中の眠気につながるケースもあります。
たとえば、「しっかり寝ているはずなのに朝すっきりしない」「授業中にぼーっとしている」といった症状の背景に、呼吸の問題が隠れていることもあります。
呼吸は1日2万回以上繰り返される生命活動です。その質が変われば、体全体に影響が及ぶのは当然といえるでしょう。
低位舌(舌の位置が低い)の問題と影響
「舌の位置」と聞いても、普段あまり意識することはないかもしれません。しかし実は、舌は上顎の成長や歯並び、呼吸の質を左右する重要な存在です。
本来、安静時の舌は上あご(口蓋)にぴったりと触れている状態が正常です。この状態が保たれることで、上顎は横方向へ適切に発育し、歯が並ぶスペースが確保されます。
しかし、口呼吸の習慣があると舌は自然と下に落ちやすくなります。これを「低位舌」といいます。低位舌が続くと、顎の成長バランスが崩れ、歯列不正や顔貌の変化につながる可能性があります。
ここでは、
- 正常な舌位とは何か
- 低位舌が引き起こす問題
- 日常でできる改善トレーニング
を具体的に解説していきます。
正常な舌位とは
正常な舌位とは、リラックスしているときに舌の先端が上の前歯のすぐ後ろ(スポットと呼ばれる位置)に軽く触れ、舌全体が上あごに吸い付くように接している状態を指します。
このとき、
- 唇は自然に閉じている
- 歯は軽く離れている(強く噛みしめていない)
- 顎や口周りに余計な力が入っていない
というのが理想的な安静位です。

たとえば、テレビを見ているときや読書中など、何もしていない時間に舌がどこにあるかを確認してみてください。舌が下の歯の裏側や口の底に触れている場合は、低位舌の可能性があります。
舌は筋肉のかたまりです。正しい位置にあることで、上顎に内側から適切な刺激が加わり、健全な発育を促します。
低位舌が及ぼす影響
低位舌が続くと、上顎の成長が不足しやすくなります。
具体的には、
- 上顎が横に広がらない
- 歯列が狭くなる
- 前歯が前方へ突出しやすくなる
- 噛み合わせが不安定になる
といった変化が起こる可能性があります。
また、舌が下がることで気道が狭くなりやすく、口呼吸がさらに助長されるという悪循環に陥ることもあります。
たとえば、低位舌のお子さまでは「常に口が開いている」「発音が不明瞭」「食事中にクチャクチャ音がする」といった特徴が見られることがあります。
歯並びだけを整えても、舌の位置が改善されなければ後戻りのリスクが高まります。そのため、原因となる機能面へのアプローチが非常に重要です。
日常でできる舌位置トレーニング
低位舌は、日常的なトレーニングによって改善が期待できます。これを「口腔筋機能療法(MFT)」といいます。
たとえば、次のような簡単なトレーニングがあります。
■ スポットポジション確認
舌先を上の前歯の後ろに軽く当て、そのまま舌全体を上あごに吸い付ける練習を行います。
■ ポッピング練習
舌を上あごに吸着させ、「ポン」と音を立てて離すトレーニング。舌の筋力強化につながります。
■ あいうべ体操
口周りの筋肉をバランスよく動かす体操で、唇や舌の機能改善に役立ちます。
重要なのは、毎日継続することです。歯磨きの後や就寝前など、習慣化しやすいタイミングで行うと続けやすくなります。
ただし、自己流で行うよりも、歯科医院で舌の状態や噛み合わせを評価したうえで指導を受ける方が効果的です。
呼吸と機能を改善する方法(トレーニングと習慣)
口呼吸や低位舌は、「クセだから仕方ない」と放置されがちです。しかし実際には、日常のトレーニングや生活習慣の見直しによって改善が期待できます。
大切なのは、「歯並びだけを整える」のではなく、呼吸・舌・唇・頬などの機能全体を整えることです。機能が整えば、顎の成長が安定し、矯正治療の効果も持続しやすくなります。
たとえば、鼻呼吸を意識するだけでも、舌の位置や口周りの筋肉の使い方は変わります。さらに口腔筋機能療法(MFT)を組み合わせることで、より根本的な改善を目指すことができます。
ここでは、
- 鼻呼吸を習慣化する方法
- 口腔筋機能療法(MFT)の具体例
- 医療的なサポートが必要なケース
を順に解説します。
鼻呼吸トレーニング(基本)
鼻呼吸を習慣化するためには、「意識」と「環境づくり」が重要です。
まず基本となるのは、日中の姿勢改善です。猫背になると顎が前に出やすく、口が開きやすくなります。背筋を伸ばし、顎を軽く引くだけでも自然と唇が閉じやすくなります。
具体的には、
- テレビを見ているときに唇を閉じる意識を持つ
- 日中に「今、口は閉じているかな?」と確認する
- 就寝前に鼻が通っているかチェックする
といった小さな習慣が大切です。
また、睡眠時に口が開いてしまう場合は、寝る前に鼻呼吸を数分間意識するだけでも違いが出ることがあります。
ただし、慢性的な鼻づまりがある場合は無理に口を閉じるのではなく、まず原因の改善が必要です。
口腔筋機能療法(MFT)の実践
口腔筋機能療法(MFT)は、舌・唇・頬の筋肉バランスを整えるトレーニングです。歯並びの改善や後戻り防止にも重要な役割を果たします。
代表的なトレーニングには、
■ リップトレーニング
唇をしっかり閉じる練習。ボタンや専用器具を使って引っ張り合う方法もあります。
■ 舌挙上トレーニング
舌を上あごにしっかり押し当てる練習。上顎の成長をサポートします。
■ 嚥下(えんげ)トレーニング
正しい飲み込み方を練習することで、舌突出癖を改善します。
たとえば、飲み込むときに唇や顎に力が入っていないかを鏡で確認するだけでも、自分の癖に気づくことができます。
継続することで筋機能が安定し、呼吸や歯列にも良い影響が期待できます。
耳鼻科との連携が必要なケース
鼻呼吸ができない原因が、単なる習慣ではなく構造的な問題である場合もあります。
たとえば、
- アレルギー性鼻炎
- 慢性的な副鼻腔炎
- 扁桃肥大
- アデノイド肥大
などがある場合、鼻づまりによって口呼吸が固定化している可能性があります。
このようなケースでは、歯科だけでの対応には限界があります。耳鼻科と連携し、鼻の通りを改善することが根本的解決につながります。
呼吸の改善は「歯科だけの問題」ではありません。医科歯科連携を行いながら、全身の健康を視野に入れたアプローチが重要です。
プレオルソで機能矯正 — 呼吸・舌・顎成長を整える
「歯並びが悪くなってから矯正する」のではなく、
「悪くなる原因を整える」という考え方をご存じでしょうか。
プレオルソは、単に歯を動かす装置ではありません。呼吸・舌位・口周りの筋機能を整えながら、顎の健全な成長をサポートする“機能矯正装置”です。
特に成長期のお子さまでは、骨が柔軟なため、正しい機能を身につけることで自然な発育を促すことが期待できます。
たとえば、口呼吸や低位舌が改善されることで、
- 上顎が横に広がりやすくなる
- 歯が並ぶスペースが確保しやすくなる
- 将来的な本格矯正の負担が軽減する可能性がある
といったメリットがあります。
ここでは、プレオルソの特徴・効果・開始時期や注意点について解説します。
プレオルソとは?
プレオルソは、主に成長期の子どもを対象としたマウスピース型の機能矯正装置です。

やわらかい素材でできており、
- 日中の一定時間
- 就寝中
に装着することで、口周りの筋肉バランスを整えます。
目的は、歯を直接強く動かすことではなく、
- 鼻呼吸への誘導
- 舌を正しい位置へ促す
- 唇の閉鎖力を高める
といった「機能改善」です。
取り外しが可能なため、学校生活への影響が比較的少なく、痛みも強い装置に比べると出にくい傾向があります。
ただし、決められた装着時間を守らなければ十分な効果は得られません。保護者のサポートも重要になります。
プレオルソの効果と仕組み
プレオルソは、口の中に入れることで自然と正しい舌位と口唇閉鎖を促す設計になっています。
具体的には、
- 舌が上あごに触れるポジションへ誘導
- 口が閉じやすい形状
- 頬や唇の過剰な圧力を緩和
といった構造です。
たとえば、低位舌のお子さまが装着すると、舌が自然と上方へ持ち上がりやすくなります。これにより上顎への内側からの刺激が適切に伝わり、横方向の発育をサポートします。
また、鼻呼吸が促されることで、慢性的な口の開きが改善しやすくなります。
重要なのは、装置だけに頼るのではなく、MFTや生活習慣改善と組み合わせることです。機能と装置の両輪で進めることで、より安定した結果が期待できます。
治療のタイミングと注意点
プレオルソは、顎の成長が活発な時期に行うことで効果を発揮しやすくなります。
一般的には、乳歯と永久歯が混在する時期(混合歯列期)に相談されるケースが多いですが、開始時期は個々の成長状態によって異なります。
注意点としては、
- 重度の骨格的問題がある場合は単独では不十分なことがある
- 鼻づまりがあると効果が出にくい
- 装着時間を守らないと改善が難しい
といった点が挙げられます。
そのため、事前の精密検査と、呼吸・舌機能の評価が非常に重要です。
「様子を見る」か「早めに介入する」かで、将来の治療内容が大きく変わることもあります。
まとめ — 呼吸改善が未来の顔と健康をつくる
口呼吸と鼻呼吸の違いは、単なるクセの問題ではありません。
呼吸の仕方は、顔つき・顎の成長・歯並び・噛み合わせ、さらには睡眠や全身の健康にまで影響を及ぼします。
特に成長期では、
- 口呼吸 → 低位舌 → 上顎の発育不足
- 歯列狭窄 → 出っ歯や開咬
- 縦長の顔貌傾向(アデノイド顔貌)
といった変化につながる可能性があります。
しかし重要なのは、早い段階で気づけば改善が目指せるということです。
鼻呼吸の習慣づけやMFT(口腔筋機能療法)によって機能を整えることは、将来の歯並びや本格矯正の負担軽減にもつながります。また、プレオルソのような機能矯正装置を活用することで、呼吸・舌位・顎の成長を総合的にサポートすることも可能です。
「歯並びが悪くなってから治す」のではなく、
「悪くなる原因を今のうちに整える」という視点が、将来の選択肢を広げます。
✔ 口がいつも開いている
✔ いびきや口の乾燥が気になる
✔ 歯並びがガタガタしてきた
✔ 横顔や口元の突出が気になる
こうしたサインがある場合は、一度専門的なチェックを受けることをおすすめします。
呼吸と噛み合わせは密接につながっています。お子さまの将来の顔立ちや健康を守るためにも、早期の評価と適切なサポートが大切です。
まずは現在の呼吸状態や舌の位置を確認することから始めてみましょう。
不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。専門的な視点から丁寧にご説明いたします。
【執筆・監修者】
たむら歯科・こども矯正歯科 院長
田村 光正 (歯科医師)
- 滋賀医科大学精神科 客員
- 睡眠歯科学会会員
- 顎咬合学会会員
- 即時荷重研究会会員
- 口育士





